2024年1月、漫画家の芦原妃名子さんが自殺と見られる形で命を落としたことが判明。この出来事の裏には、日本テレビで放送された芦原さん原作のドラマの存在がありました。
今回は漫画「セクシー田中さん」の作者が亡くなった件について振り返ります。
「セクシー田中さん」の作者が死亡した経緯
なぜ「セクシー田中さん」の作者である芦原さんが死亡することとなったのでしょうか。一連の騒動について改めて振り返っていきます。
日本テレビで「セクシー田中さん」のドラマが放送
2023年10月クールの日本テレビのドラマとして芦原先生の同名漫画を原作とする「セクシー田中さん」が放送されました。同作は民法ゴールデンプライム帯の連続ドラマ初主演となる木南晴夏さんを主演とした作品で、初回の視聴率は7.2%を記録。視聴者からは概ね高い評価を得ていた一方で、終盤の展開に疑問の声を抱く視聴者もSNSなどで少なからず見られました。
脚本担当の相沢友子がSNSで心境を吐露
同ドラマの脚本を務めたのは相沢友子さんでしたが、実は相澤さんが脚本を務めたのは1~8話まで。9話、そして最終話は原作の芦原さんがドラマ脚本も務めたのですが、最終回が放送された12月24日に相沢さんは「最後は脚本も書きたいという原作の要望で、残念ながら自分は急遽該当話について脚本ではなく協力という形で携わった」と投稿しました。
12月28日にも改めてSNSに投稿し、「今回の出来事はドラマ制作の在り方、脚本家の存在意義について深く考えさせられるものでした」と、心境を吐露。一連の出来事を「苦い出来事」と表現しました。
原作の芦原妃名子がドラマ化経緯を公表
2024年1月26日、芦原さんはセクシー田中さんのドラマ化の経緯についてSNSで説明しています。元々、漫画に忠実にドラマ化し、ドラマオリジナルとなる終盤も原作者があらすじからセリフまで用意し、原則変更しないことなどを条件として日本テレビに伝えていたものの、毎度提出された脚本は原作を大きく改変したものだったそうです。
脚本が提出される度に芦原が訂正
脚本が提出される度、芦原さんは元の約束に沿うように脚本を自ら訂正するという作業が繰り返され、最終的に終盤の脚本は相沢さんを外して芦原さんが自ら、相当短い時間で執筆、それを日本テレビと専門家が内容を整えるという形になったとしています。
芦原さんは自身が出した条件について、テレビ局側には「本当にこれで良いか」と何度も確認した上でドラマ化をスタートさせたものの、結果的に約束が全く守られていないような内容の脚本が提出されていたということになります。
SNSで誹謗中傷が巻き起こる
相沢さんのSNSの投稿の際には、少なからず芦原さんを口撃するような声がSNSで見られました。ですが、芦原さんの声明を受けて、一転SNSユーザーは芦原さんを擁護するような投稿を多く行い、日本テレビに抗議の声をあげました。
まずかったのは、相沢さんに対する非難も多く寄せられたこと。誹謗中傷といっても過言ではないような執拗な攻撃が相沢さんに向けられることとなったのです。
芦原妃名子が亡くなる事態に
そして、1月28日、芦原さんが自殺とみられる形で亡くなったことが明らかとなりました。芦原さんが命を絶った理由は正確には明かされていませんが、亡くなる前に芦原さんは自身のそれまでのSNSの投稿を削除し、新たに「攻撃したかったわけじゃなくて。ごめんなさい」と投稿していたことが明らかになっています。
素直に受け取れば、自身の投稿を機に相沢さん個人への攻撃が盛んに行われたことに心を痛めたということでしょう。
芦原妃名子が亡くなった後の展開
芦原さんが亡くなった後、相沢さんは自身の投稿に関して「もっと慎重になるべきだったと深く後悔、反省しています」と投稿し、その後自身のSNSのアカウントを削除することを表明しました。この際、相沢さんは芦原さんの投稿を読んで初めてその原作者とテレビ局の約束などの内容を知ったとしています。
日本テレビは本騒動について社内特別調査チームを設置、原作のセクシー田中さんを出版していた小学館も特別調査委員会を設置することとしました。
原作者とテレビ局のすれ違い
日本テレビの社内特別調査チームの調査結果では、日本テレビ側が小学館側から原作者の意向をドラマ化の条件として明確に伝えられた認識はなく、双方に原作の改変の程度について認識の齟齬が生じていたということでした。
ドラマを制作する中で、芦原さんが制作側に不信感を抱いていたことが明らかになっていますが、脚本の相沢さんもまた日本テレビの対応から不満を覚え、すべての脚本家の尊厳にかかわるという危機感を持ち、ドラマ最終話の放送後に自らの立場をSNSで投稿したということが明らかになっています。
忘れてはならない事件とSNSの関係
一連の騒動が起こって以降、主に原作者の尊厳を守るという立場からテレビ局や脚本家に対するバッシングがSNSなどで繰り返され、テレビ局に対する反省を求める声は根強いです。
一方で芦原さんがSNSの、自分以外に向けられた過激な投稿に苦しんだ可能性があることについては見逃されがちで、本件の議論については「ドラマの原作改変の是非」などに留まっている傾向にあります。
SNSの使い方
テレビ局は今後ドラマ制作において原作者の意向をより念入りに確認し、原作者としっかりコミュニケーションを取ることが重要視されるでしょう。
ですがそれ以上に、相沢さん、芦原さんが自身の名誉や尊厳を守るために行ったSNSの投稿が第三者のSNSでの反応によってあまりにも強い攻撃性を持ったものになってしまった事実は、決して忘れてはならないことだと思います。
最後に
今回はセクシー田中さんの作者が死亡した騒動について改めて振り返りました。二度とこういった悲劇を繰り返さないために必要なことは一体何なのか。SNSの在り方にこそ、そのヒントがあるのではないでしょうか。