長寿漫画として知られる『ゴルゴ13』ですが、作者のさいとう・たかを氏が2021年に死亡していることをご存じでしょうか。それにもかかわらず、現在も連載が継続されています。なぜ作者の死後も作品が途切れることなく読者に届けられているのか。本記事では、さいとう・たかを氏の死亡、分業体制について解説します。
ゴルゴ13の作者は死亡している
ゴルゴ13の作者さいとう・たかを氏(本名:齊藤隆夫)は、2021年9月24日午前10時42分に膵臓がんのため84歳で死亡しました。訃報は同月29日に小学館から正式に発表され、葬儀は新型コロナウイルスの影響を考慮して親族のみで執り行われました。半世紀以上にわたって劇画界を牽引してきた巨匠の突然の訃報は、多くのファンに衝撃を与えました。
作者死亡後も連載が続く理由
さいとう氏は生前から周囲に対し、「自分抜きでも『ゴルゴ13』は続いてほしい」と明確に希望を伝えていました。この言葉には、作品を自分個人の所有物ではなく、読者やスタッフと共有する財産として捉える氏の姿勢が表れています。作者自身がこうした意思を残していたからこそ、関係者全員が迷いなく連載継続を決断できたのです。
引用元:スポニチアネックス
制作システム
さいとう氏は長年かけて、自分がいなくても作品が成立する体制を構築してきました。現在はさいとう・プロダクション、複数の脚本スタッフ、そして「ビッグコミック」編集部が三者一体となって制作を進めています。小学館編集部はこの体制を「分業制の究極の形」と表現しており、作者の死後も高いクオリティが維持されているのです。
日本マンガ界に革命をもたらした分業制
さいとう氏は1960年に「さいとう・プロダクション」を設立し、日本のマンガ業界に分業制という新しい概念を持ち込みました。当時のマンガ業界では、作家が一人ですべてを描くのが一般的でした。しかし氏は映画制作の手法を参考に、各分野の専門家が協力して一つの作品を作り上げるシステムを導入したのです。
職人としての哲学
さいとう氏は自身を「天才」ではなく「職人」と位置づけていました。締め切りを厳守し、読者の期待に応え続けることこそが職人の矜持だと考えていたのです。マンガを一人の才能に依存する不安定なものではなく、プロフェッショナル集団による確立された職業として発展させることを目指しました。
スタッフへの配慮
さいとう氏はアシスタントを単なる補助者ではなく「スタッフ」と呼び、対等な立場で接していました。当時のマンガ業界に蔓延していた低賃金・長時間労働という問題に対し、雇用条件や待遇の改善にも積極的に取り組んでいたのです。こうした姿勢が、優秀な人材を長期間惹きつける要因となりました。
分業制の具体的な仕組み
脚本を担当するのは5〜10名ほどのチームで、プロの脚本家だけでなく軍事ライターや元外交官なども参加しています。国際情勢や軍事技術に精通した専門家が関わることで、『ゴルゴ13』特有のリアリティが生まれるのです。さいとう氏は生前、脚本に過度な口出しをせず、予想外の展開を歓迎していました。
作画の専門分業
作画は、キャラクター、背景、銃器などのメカニックをそれぞれ得意とするスタッフが担当しています。一人がすべてを描くのではなく、各分野のスペシャリストが力を結集することで、統一感がありながらも完成度の高い作品が生まれます。この方式により、安定したクオリティでの長期連載が実現しました。
ゴルゴの顔の継承
かつて、さいとう氏が必ず自分でペン入れしていた主人公ゴルゴの顔、特に目や眉の部分は、現在では過去の膨大なストックからトレースして描かれています。何千という表情のデータベースから最適なものを選び出すことで、作者不在でもゴルゴらしさを保っているのです。
効果音のデジタル再現
「ズキューン」などの独特な手書き効果音も、さいとう氏の個性が色濃く出ていた部分でした。現在はこれらの効果音を過去作品からスキャンし、PC上で配置する方法で再現しています。手作業の温かみを残しつつ、効率的に制作を進める工夫がなされているのです。
最終回に関する都市伝説と真相
さいとう氏は「最終回は頭の中にある」と語っており、20代の頃に考えたコマ割りまで鮮明に記憶していたと言われています。半世紀以上前から物語の終着点を見据えていたという事実は、氏の作品に対する深い愛情と計画性を物語っています。
金庫保管説の否定
ファンの間では「金庫に最終回の原稿が保管されている」という都市伝説が長年語り継がれてきました。しかし、さいとう氏本人はインタビューで「私の頭の中にしかありません」とはっきり否定しています。物理的な原稿は存在せず、あくまで構想として温められていたのです。
引用元:週刊女性PRIME
幻の最終回エピソード
かつてさいとう氏がスタッフに明かした最終回の案では、狙撃を終えたゴルゴが道を歩いている際、偶然居合わせたコソ泥に刺されてあっけなく死ぬという展開でした。しかし1973年のドラマ『太陽にほえろ!』でも同様の演出があったため、この案は断念されたという逸話が残っています。
ゴルゴ13の記録と功績
2021年7月、『ゴルゴ13』は単一漫画シリーズとして「最も発行巻数が多い」ギネス世界記録に認定されました。当時の巻数は201巻で、半世紀を超える連載の重みを示す記録となったのです。この快挙は、さいとう氏の逝去わずか2か月前のことでした。
休載のない連載
1968年の連載開始以来、作者の都合による休載は一度もありませんでした。唯一の例外は2020年に新型コロナウイルスの影響で作業現場の密を避けるために行われた一時的な休載のみです。この記録は、さいとう氏の職人魂と分業体制の強固さを証明しています。
スピンオフ作品の展開
さいとう氏は最晩年の2021年7月、初となるスピンオフ作品『銃器職人・デイブ』の連載を自ら開始しました。その後も『Gの遺伝子 少女ファネット』などの派生作品が制作され、『ゴルゴ13』の世界観はさらに広がりを見せています。
まとめ
ゴルゴ13の作者さいとう・たかを氏は2021年9月に84歳で死亡しましたが、確立された分業体制により『ゴルゴ13』の連載は今も続いています。革新的なプロダクション・システムは、マンガ界に大きな影響を与えました。作者がいなくても高いクオリティを維持できる体制こそが、最大の遺産と言えるでしょう。
